ばら遊び 2024.1月
2024.1.27 カミキリムシに学んだこと?
穏やかな天気の土曜日でした。引きこもり爺は何をするでもなく、一日があっという間に過ぎてしまいます。少しは仕事でもすればいいものを、ぼーっとして、時間を無駄にしてしまいました。 早くも夕方になりました。日本ばら会から新花コンクールの出品苗の植付け日が2/19に決定との知らせがあり、2/17に発送するまでの作業工程表を作りました。仕事は明日することにして、このままブログを更新して遊ぶことに決めました。 PCに向かうのは眼の負担になりますが、何を書こうか考えるのはとても楽しいです。時間を忘れてしまいます。 気になっていた日本国花苑ばら園でのことを書くことにします。 昨年だったでしょうか、はっきりしませんが、春か夏の剪定講習会でした。私がヘタクソな剪定をしていると、ある参加者の方が切り落とした枝を拾って、「これは、ガンシュですか」と質問されました。枝にガンシュ?と、一瞬迷いましたが、よく見てみるとそのコブの原因がわかり、ガンシュではないと答えました。しかし、その原因や理由については剪定途中であったこともあって詳しく答えることはできず、そのままになってしまいました。 後で思ったのですが、その枝の写真を撮っておけばよかったと後悔しました。本に描かれた模式図で見たことはありましたが、実物を見たのは初めてでしたから。その時の枝を、ワードを使って再現してみました。それが、図1です。
ガンシュのようなコブの下に、明らかにカミキリムシに食われた跡があったのです。カミキリは上手に樹皮を剝ぐように食べます。一周されて食べられたものですから、表皮の下の師部(栄養が通る師管が集まっている組織)が切断されて、葉から流れてくる糖分が行き場がなくなり、そこに溜まってコブになったのです。(図2の樹皮の部分をぐるりと食べられたという状態でした) この現象を生物学では“環状除皮(かんじょうじょひ)”といい、葉で作られたフロリゲン(花芽形成ホルモン)の移動を妨げる実験操作として出てくる程度です。 ところが、農学の世界では、“環状剝皮(はくひ)”と呼んで、その技術や効果はウェブでもたくさん出てきますから、興味のある方は検索してみてください。 奥行きがあってより現実的な農学を専攻すべきであったと今更のように思います。 昨年の高温障害で、県内の果樹農家の赤くならないリンゴや黒くならないブドウ(巨砲)が話題になりました。赤くならないサンフジや薄紫色の巨砲は残念ですがおいしそうには見えませんよね。 素人考えですが、高温になればなるほど植物の呼吸量が増します。呼吸には葉で作られるブドウ糖が使われます。呼吸で消費する最大の消費者は、光合成をしない茎と根です。その結果、十分なブドウ糖が成熟途上の果実にいきわたらなかったため、アントシアンなどの色素の合成不足が生じたのではないでしょうか。 リンゴはわかりませんが、ブドウの世界では、色付けをよくするための“環状剝皮”が行われているようです。茎や根に転流するブドウ糖量をセーブしているんですね。1㎝くらいの幅で樹皮を剥く器具もあるんですね。びっくりです。 バラでそれを使用すると花色が濃くて巨大輪になりますかね。どなたかやってみませんか? 今日は、バラで環状剝皮に気づかせてくれたにっくきカミキリに感謝かな??
2024.1.19 花の構造を決める遺伝子
会員の皆さんは年間を通してバラの花をご覧になっておられると思います。花の中心にはめしべ、その周りにはおしべ、そして花びら、がく片が並びます。バラの花に限らず、被子植物の花はだいたいこの順番で中心から外側に向けて並んでいます。これが花の構造です。チューリップにはがく片がありませんから例外はたくさんあるかもしれません。 皆さんのご家族に高校生はいらっしゃいますか。 皆さんが高校生の親世代であってもあるいは祖父母世代であっても、皆さんご自身はおそらく、この花の構造については高校時代に学習しておられないと思います。しかし、今の高校生は花の構造は遺伝子に支配されていることを学んでいますからびっくりですよね! 小、中学校で花の構造は習うものの、高校生は自分で種を植えて花を育てるという経験はほとんどしていないと思います。しかし、花の形は3種類のホメオティック遺伝子(Aクラス、Bクラス、Cクラス)が関与しており、1つでも遺伝子が欠損すると、正常な花の構造がつくられなくなることや遺伝子同士のかかわりを“ABCモデル”として、教科書と黒板だけの空想の世界で学習しています。 そこで、皆さんをこの空想の世界へお誘いしたいと思います。
次の図1と図2をご覧ください。これは2015年センター試験の追試験で出題された模式図をコピーしたものです。 図1はふつうの花の構造です。これによると、一番外側にがく片がありますが、これは領域1にある遺伝子Aの調節を受けています。二番目は花弁です。これは領域2にある遺伝子AとBの調節を受けています。三番目はおしべです。これは領域3にある遺伝子BとCの調節を受けています。そして中心にはめしべがあり、遺伝子Cの調節を受けています。この模式図こそが、ABCモデルなのです。 ところが、図2をご覧ください。これはチューリップの模式図です。がく片がなくて、花弁が二重になっていますね。これはどう考えたらよいのでしょうか。 領域1は本来遺伝子Aだけがはたらく場所だったのですが、遺伝子Bが領域2と同じようにはたらいてしまったと考えます。
さて、ここまで理解していただきましたでしょうか。それでは本題にまいります。大丈夫でしょうか! 2018年の東北大学の問題に挑戦しましょう!天下の東北大学ですよ皆さん、だ、だいじょうぶです!子や孫に負けてたまるか精神で、どーぞ挑戦を! 図をご覧いただきましたでしょうか。ABCモデルそのものですね。 ただし、ヒントを差し上げます。本文でそのこともきちんと書いてあるのですが、一応。それは、AとCの関係性です。Aが欠損していた場合、CがAの領域(1,2)まで支配し、逆に、Cが欠損していた場合はAがCの領域(3,4)まで支配することになります。 それではまいります。 設問1 図で示したようなモデルを何というか。 (正解 ABCモデル できましたね、おめでとうございます。パチパチ~~) 設問2 Aクラスの遺伝子の機能が失われた植物において、花の4つの同心円領域に形成される器官を、外側から順に記せ。 (正解 領域1:めしべ 領域2:おしべ 領域3:おしべ 領域4:めしべ できましたか?すごいです!パチパチ~~) 設問3 すべての同心円領域で機能するように操作したBクラスの遺伝子を、Cクラスの機能が失われた植物に遺伝子組換えにより導入した。この植物において、花の4つの同心円領域に形成される器官を、外側から順に記せ。 (正解 領域1:花弁 領域2:花弁 領域3:花弁 領域4:花弁 ここまでできた方は東北大学合格です!!! すごいです!)
設問4 Aクラス、Bクラス、Cクラスのすべての遺伝子の機能が失われた植物において、花の4つの同心円領域に形成される器官を、外側から順に記せ。 ヒント:本文の書き出しに、次のような文章が書かれています。参考にして考えてください。 「花を咲かせる時期になった植物では、頂芽や側芽が変化して花芽が形成される……」 ( ウ~ン、これはむずかしいですね。できた方、優勝です!!! 正解はしばらく伏せておくことにします。わかった方はどこかで声をかけてくださいね。コメント欄で答えてくださってもよろしいですよ)
おまけの写真を2枚、どうかご覧ください。側芽が花芽に変化した我家のジェミニです。こんなこともあるんですね。設問4の逆バージョンですね。不思議です。確か、2012年度の会報(日本ばら会,秋田バラ会)に写真を投稿し、掲載していただきました。ジェミニは今年もこの花芽が出ていましたね。 最後までお付き合いくださってありがとうございました。
2024.1.13 目にやさしい紙にしました
長かった冬休みもそろそろ終わります。 朝早くから夜寝るまでの長~い時間、PCやスマホの画面、そしてテレビを見てしまいます。そのせいか、性能の著しく劣った眼が悲鳴をあげています。天気の良い日の散歩では雪に反射した光線が眼を突き刺し、目がくらみ、どこを歩いているのか一瞬わからなくなります。散歩にはサングラスをするように心がけていますが、大体は忘れて出かけてしまいます。 このブログも長いこと投稿させていただきました。2022年の9月から始めましたから、1年を超えました。去年の今頃何をしていたのか探してみようと思っても、PC相手では目に結構な負担を感じてしまいます。そこで、ヒマなバラ爺は自分の全ブログを紙に印刷することにしました。その結果、ちょうどファイル一冊分に収まりました。 紙で検索だなんてなんとアナログ!と皆さんはお思いでしょうが、PCとのニラメッコ時間が少しでも解消できるならとの思いです。紙の方が目にやさしいです。 昨年の1/13のブログに庭の写真が載っています。今年とどうでしょうか。ほとんど同じですね。
昨年の写真説明に、「葉が凍傷で枯れる」とあります。 凍傷については、“遅霜に注意”ということで、バラCaféで何度か学習しましたね。ブドウ糖液を葉面散布するとどうして凍傷が防げるのでしょうか。皆さん、理解されてますでしょうか。 植物細胞は細胞壁で保護されているとはいえ、細胞液の凍結によって体積を増し、細胞壁が破壊されて枯れてしまいます。 ところが植物は低温を経験することによって、凍結しにくい細胞液に徐々に変えていく能力があります。貯蔵デンプンをブドウ糖のような小さな分子に分解して細胞液のモル濃度(溶けている溶質の粒数)を上げることで、凝固点(氷になる温度)を下げようとします。真水より砂糖水や塩水の方が凍りにくいということです。たとえば、雪中貯蔵などで低温を経験させたハクサイやキャベツは甘みが強いということはどなたも経験されていることだと思います。バラもきっと凝固点降下で対応してきたのでしょうが、いよいよここで限界なんですね。 遅霜対策に話を戻しますが、私は、ブドウ糖の葉面散布は一度も経験ありません。まず、散布するタイミングがわかりません。いつ、何回散布するのか、わからないことだらけです。 それよりも、地植えの大事な株に傘をさすなどの物理的な方法であればできないこともないように思います。冷気の流れ込みをやわらげる工夫があればよいのですよね。農家の方は肥料袋などであんどんを作っていますね。静岡県などの茶どころでは、新茶の茶摘みの時期である八十八夜(今年は5月1日)が過ぎるまで、冷気が茶畑に下りないように畑の上で扇風機を回しています。扇風機は電柱のような高い支柱の上に設置されていて、空気を撹拌するのですね。寒いのに扇風機なんてますます寒くなりそうですが、違うんですね。下にこもる冷気を払っているのです。 我家は何度も申していますが、春の剪定後から防風用の網(4mm)を張っています。これが霜対策になっているかどうかはわかりません。霜焼けはないですが出開きやブラインドは毎年ありますから、低温対策には効果はないと思います。
2024.1.4 楽しいはずの正月でしたが、、
雪の降らない暖かな正月を迎えましたが、能登や羽田では大変なことが起こってしまいました。まったくもって、めでたくない新年を迎えてしまいました。 災害に遭われた皆さまには心からお見舞い申し上げます。 神さまは何と無慈悲なことをなさるのでしょうか。よりによってこんな日に。。。 我家では帰省していた一人は予定通り飛行機が飛んで帰れましたが、もう一人は不運にも欠航となったため、こまちは満員でダメ、特急いなほ(新潟経由)で帰りました。 満天青空の1月4日です。今日から仕事始めですね。お疲れさまです。ヒマな爺は朝から外で遊びます。 白鳥が編隊を組んで北の空に向かっています。元日もそうでしたが、ものすごい数で飛んでいきます。リーダーの鳴き声がグループのメンバーに気合を入れているように聞こえます。ちょいと白鳥さん! 北帰行、早すぎませんか! 明日は岐阜県可児市のばら園に出品苗2品種(6本)を送ります。天気がよいので午後から準備作業に入りました。何度もこのブログでようすを見ていただいておりますが、どうか今回も写真でお付き合いください。真冬でもこんなことをして遊んでいます。皆さんも「育種」始めませんか! 新種のバラをつくることは、ばら展に出品することよりたやすいことですよ! 夢があるんです。
新しく植え込んだ苗の根回りに少しですが牛糞堆肥をまきました。寒肥が浅くて顔を出していたので隠してあげました。何の意味もないことですが。寒肥はもう少し掘って入れないとだめですね。 光華は12/15に蕾で採花しました。2日後に開花し、まだ風除室で咲いています。寒いと花が驚異的にもちますね。
さすがに植物専門家の記事圧倒されて読ませて頂きました。人柄もにじみでて楽しい読み物にもなつています。何時の日か、格調髙いエッセイとして出版されることを祈ります。秋田が先進のバラ文化発生の地と位置付けられる日が来ると予感します。伊藤理事も含め会員皆様の今年のご活躍お願い申し上げます。
大内先生からお褒めの言葉をいただき、大変うれしく思います。
豚が木に登ってエッセイストにでもなったらどうしましょうか(笑)
先生がバラ展に出品してくださったり、バラCaféで一言お話しくださることが、会員とつながっていただいている証と受け止めております。
昨年7月のCaféだったでしょうか。先生は、「いつものように育てていたら、ちょうどいい感じで咲いていたから出品できただけです」とおっしゃいました。バラが咲きたいように咲かせている――バラとの向き合い方が自然体でいらっしゃる先生のお姿に触れ、大変共感を覚えました。会場に清新な風を送ってくださっていることに感謝いたします。
今年もお元気でバラを育ててください。また、バラ展でお会いしましょう!